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装剣金工師(そうけんきんこうし)
刀身に彫刻する
刀身には、彫刻が施されることもあります。最も一般的なものは、刀の強度は減らさず目方を軽くする刀樋(かたなひ)です。また、信仰によるものとして、不動明王(ふどうみょうおう)、摩利支天(まりしてん)などの諸仏を表す梵字(ぼんじ)や、倶利迦羅龍(くりからりゅう)や素剣、護摩箸(ごまばし)、香箸(こうばし)などの仏具類のモチーフもよく見られます。近世以降、武家社会が平和な時代になると松竹梅、漢詩、和歌などのような装飾的なモチーフが多く彫られるようになりました。現在では、日本の伝統美術工芸として、伝統技術の粋と高い芸術性が受け継がれています。
刀身に立体的な造形美を作り出す刀身彫刻は、日本刀の美しさをさらに引き出す芸術です。
作業工程
絵付け
下絵の構図を和紙に描き、その後、直接刀身に墨で写します。
彫り
下絵の通り、鏨(たがね)で線を描き、さらにあら彫り、上彫りという工程を経て、立体的な造形美術が生まれます。
磨き
最後の仕上げとして、鏨(たがね)の痕を滑らかに磨きあげます。
象嵌(ぞうがん)
象嵌とは、一つの物質に異なった素材の物質をはめ込む技術のことで、高肉象嵌、布目象嵌、平象嵌などの技法があります。
彩色を施すために、金・銀・銅などを金槌で打ち込み、繊細な象眼を施します。
刀装金具の製作
装剣金工師は、鐔(つば)や小柄(こづか)や目貫(めぬき)などの刀装金具の製作を行うこともあります。
このうち、鐔は刀剣づくりと同様の鍛鉄(たんてつ)を使うこともあり、刀身彫りと同様の作業を行なって装飾します。ミリ単位の細かな彫金や立体的で繊細な象嵌、地金を保護するための錆づけなどを行います。こうした作業を経て、様々な彫刻や象嵌が浮かび上がり、鐔の中で小宇宙が完成します。