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柄巻師(つかまきし)
柄を巻く
柄巻(つかまき)は、柄(つか)を補強する目的と、手溜(てだまり)をよくする目的とで行なわれたものです。古代では、刀の柄(つか)は漆木(うるし)や藤づるで巻いたりしていましたが、江戸時代になると革包みにして正絹(しょうけん)の組紐(くみひも)で菱(ひし)に巻くようになりました。また、柄下地を補強し、組紐(くみひも)がずれないようにする工夫として、柄木地(つかきじ)に鮫皮(さめがわ※エイの皮)を使いました。上質な鮫皮は、一匹のエイから一枚しかとれません。
作業工程
柄下地(つかしたじ)
鞘師(さやし)が作った柄木地(つかきじ)をもとに、鮫革(さめがわ)や糸の太さや巻き数などの仕上がりを想定して肉取りをしておきます。
鮫着せ(さめきせ)
鮫皮は柄の大きさに合わせ切り取り、水につけて柔かくした後、何度か仮着せを行い、続飯(そくい)で貼り付けます。
柄の刃方(はかた)と棟方(むねかた)に、幅約1.5センチメートルの薄く削った経木(きょうぎ)を貼り付けます。接着には、松樹脂(まつやに)に菜種油(なたねあぶら)を混ぜ合わせた“くすね"を使います。
柄巻き
糸の長さを決め巻き始めます。その過程で菱(ひし)の形を美しく整えることと手溜(てだまり)をよくするために込め紙(和紙をよく揉んで柔らかくした物)を糸の下に入れ込み、巻き上げていきます。
糸巻きには、「常組(つねぐみ)糸巻」、「蛇腹(じゃばら)糸巻」など様々な様式があり、機能性と合わせて美しさを演出します。